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家づくりの前に椅子を学べ

Live in Kyoto
Pen : Pilot - CUSTOM 743 (M)
Ink : Pilot - KONPEKI

普通は逆かもしれない。まず内装を決めてから、それに合う椅子を探すのかもしれない。でも私は初めに椅子があるほうが正しいと思う。食事のときはずっと椅子に座っているわけだし、仕事をしているときも椅子の上だ。歩くときに服よりも靴が大事なように、家具のなかで椅子がいちばん大事だ。

永江 朗 : そうだ、京都に住もう
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これまで、「現役引退後、どこに住むか」「琵琶湖でのセミリタイア生活」 といった稿でお伝えしてきましたが、現役引退後の生活を、あいも変わらず妄想して楽しんでおります。

移住地として京都はその有力候補。そんなわけで永江 朗さんの 「そうだ、京都に住もう」 という本をだいぶ前に買っておりました。
京都に住む

しかし、その後、不動産バブルが起きて京都の不動産価格が高騰。「京都に家は買えないなあ」 と思うようになり、この本の存在も忘れておりました。

先日、本棚を漁っていて、ひょっこり見つけたこの本を手に取る気になったのは、「不動産バブルも一段落か」 という報道が頭の片隅にあったせいかもしれません。

Akira Nagae
著者の永江さんは、早稲田大学の教授も勤められた東京在住のフリーライター。

京都に住む2

ガエまちや2

本の巻頭には、リノベーション完成後の永江邸の写真が掲載されており、これがシビれるほどカッコいいんです!

写真に惹かれて本文を読み進めました。永江さんがセカンドハウスとして京都の古い町家を購入し、そこをリノベーションしてゆくプロセスの詳細が記されています。

最初のうち、私は本書をフムフムと気軽に読んでいて、「なるほど、こうやれば永江さんと同じことを自分でもできそうだな」 と安易に思っていました。

家作りとは、施主が好みの建築家を探し、建築家に予算を含めた要望を伝え、建築家と相談しながら自分の家を作ってゆくこと。

それだけのことですが、本書を読み進めるうちに、ステキな家、ステキな空間を作るのは、容易でないことがわかってきました。

家とは、施主と建築家の共同作品であるものの、よく考えてみれば、家の完成時が 「作品の完成」 ではないんですね。つまり、家の完成時は、「箱」 ができたにすぎないわけですから、家という芸術作品の真価が問われるのはむしろ、家の完成後に施主が家をどう使いこなすかにかかっているのです。

したがって、いくら建築家の腕が良くても、施主側に高い美意識、センスが無いと、良い作品には仕上がらないということがわかります。

永江さんの京都の家 (「 ガエまちや」 と命名されています) が光り輝いて見えるのは、リノベーションの設計を担った建築家の河合敏明氏の力はもちろんですが、永江さんご夫婦のセンスの賜物ということに他なりません。

ということは、永江さんのように、ステキな家を作ろうと思ったら、建築家を探す前に、まずは自分のセンスを磨かないとダメということなります。そのことに気づいてから、本書を読む姿勢が変わりました。

永江さんのキラリとしたセンスを感じたのは、壁紙に対するこだわりでした。永江さんは本書で次のように述べておられます。

++++++++++++++++++++
「1階のリビングには、ウィリアム・モリスの壁紙を使いたいと思っていた。全面をモリスというのはやりすぎかもしれないが、一部分にだけ使うのならいいんじゃないか。ウィリアム・モリスのある部屋から坪庭をぼんやり眺めていたいと思った」
++++++++++++++++++++

京都に住む3
最終的には、1階のリビングではなく、屋根裏にウィリアム・モリスの壁紙が貼られることになります。そうしてできあがった様子が上の写真です。

ウイリアム モリス アネモネ
貼られたのはウィリアム・モリスの「アネモネ」という作品。

ウイリアム モリス
ウィリアム・モリスはイギリス人。19世紀後半、生活の中に芸術を取り入れようという思想を唱え、実践し、数々の作品を残すとともに、現代における 「デザイン」 という思想の源流を作り上げた人です。

イギリス風のレトロなデザインの壁紙を、和を意識した空間に組み入れようとする永江さんのセンスには脱帽です。

永江さんが 「ウィリアム・モリスの作品を貼りたい」 と思うに至る過程を考えてみますと、ウィリアム・モリスのデザインそのものの美しさもさることながら、現代のデザインの礎に流れる、その歴史や物語を肌で感じたいという狙いもあったはずです。すなわち、他の誰でもないウィリアム・モリスの作品でなければならないこだわり、必然性があったということになります。永江さんほどの教養を持っていると、人生は深みを増すのでしょうねえ。憧れちゃうなあ。

また、本稿の冒頭に挙げたように、永江さんは椅子に対する強いこだわりを持っておられます。「椅子を決めた後に内装を決める」 なんて発想、凡人には思いもよりません。

Hans Wegner mini bear
そうして永江さんがこの家に選んだ椅子は、ハンス・ウェグナーの 「ミニベア」 でした。

hans wegner
ハンス・ウェグナーはデンマークの家具デザイナーでして、とくに椅子は名品として称えられています。

どうして永江さんはそんなに椅子にこだわるのでしょう?  不思議なことに、美意識の高い人が 「住」 の分野において最終的に行き着くのは椅子なんですよね。

Atsushi Watanabe
例えば、私の好きな 「建もの探訪」 という番組でナビゲーターを務められる俳優の渡辺篤史さんは (上の写真)、番組の中で椅子をみつけると、必ずといってよいほど、椅子に座り、座り心地をたしかめるとともに、そこから眺める風景についてコメントされます。そしてまた、驚くことに、椅子を見ただけでデザイナーと作品名をたちどころに当てるのです。「椅子マニア選手権」 があれば、上位入賞は確実かも(笑)。

Yoshifumi Nakamura 100
渡辺篤史の建てもの探訪 BOOK」 という本には、建築家の中村好文さん(上の写真)との対談が収められています。その中で、中村さんが大学を卒業後、家具づくりを勉強された経緯について、中村さんの次のコメントがありました。

++++++++++++++++++++
「家具、とりわけ椅子は、身体に一番近い。手触りを直接感じるものだし、文字通り身体を支えるもの。ですから身体感覚をトレーニングするためには(建築家にとって)とても勉強になると思いますね。建築って、身体感覚から発想していくものか、反対に頭で概念的に考えるものか、どちらかになりますが、家具は身体感覚から入って発想していくほうが多いでしょ。そこが面白いんですよ」
++++++++++++++++++++

どうやら椅子にこそ、建築の神髄が潜んでいると言えそうです。

しかし、私自身は 「椅子なんて座れればいいや」 と思ってしまうわけでして、椅子に大金を費やす覚悟はできていません。まだまだ修行が足らんです。

「椅子って面白いなあ」 と、その世界に開眼するときが、建築家に依頼して自分の家を作るタイミングなのかもしれません。
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コメント

非公開コメント

センス

私の、中学の恩師は、ご存じ、神奈川の葉山に家を建てました。その家がグッドデザイン賞に輝いたのです。豪邸ではありませんが、恩師のこだわりと、設計者のアイデア満載の、素敵なお宅です。まさに、おっしゃる通りです。

senri32 さんへ

コメントありがとうございます。

senri32 さんの恩師、すごいですね。グッドデザイン賞ですか。

senri32 さんのサイトで掲載されている、葉山から見える富士山の写真もすてきです。恩師もグッドデザイン賞の家から、富士を眺めて楽しんでおられるのでしょうね。羨ましいなあ。

今後ともよろしくお願いします。

RINZEN

No title

読ませてもらってすごくうれしかったです。
我が家もイスは大好きで
ワイズチェアを愛用しています。
美しさもさることながら
機能性はバッチリですね!

nagarerukomo さんへ

コメントいただきありがとうございます。

ワイズチェア、ハンス・ウェグナーの作品ですね。たまたま昨日、録画していた建もの探訪を見ていたら、渡辺篤史さんが 「おっ、ハンス・ウェグナーだ」 と言って座られ、「いいねぇ!」 とうっとりされていました。背中を支えるラインのスッキリしたラインが特徴ですね。

ここまでくれば、椅子もひとつの彫刻作品。彫刻のために十万円以上出すのは勇気がいりますが、実用を兼ねると思えば椅子はお値打ちと言えるかもしれません。

我が家もまずは思い切って、ひとつ買うところからスタートしたいと思います。
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良い椅子

楽しく拝読させて頂きました ^_^

椅子は買う前に、まず
どんな方も
ホテルや美術館や
カッシーナやデパートの家具売り場などで
良い椅子に
沢山座ってみられると良いと思うのです。

なぜ椅子にこだわるのか。

それは座り心地が全く違うからで、
以前、建築家の椅子や
サイドにヘッドレストのあるアンティークの椅子に座って
はっとした経験があります。

同時に、
年を重ねて老年に入るに従って
椅子の持つ意味が、
だんだん変化してくるからかもしれません。


良い椅子に巡り合えますように ^_^

私のブログに訪問頂き有難うございました

初めまして、えいしんです。

私の拙いブログに訪問頂き、有難うございました。
「椅子」については、結構不思議な経験を
しています。
最近新しい椅子を購入しましたが、今まで使用していた
椅子と、ほんの少し座る高さが違うのに、とても違和感
があることに、驚いた次第です。
人間は、椅子に座った時の腰の位置が、少し異なった
だけで、違和感を感じるものだということを、実感しました。


それでは、お疲れさまでした。

えるて さんへ

コメントいただき、ありがとうございます。

「年を重ねて老年に入るに従って
椅子の持つ意味が、
だんだん変化してくるからかもしれません。 」

心に染み入るお言葉です! 開高 健の本の題ではありませんが、「生物としての静物」 となる椅子が欲しいものです。 

えるてさんの、美に満ち溢れたブログ、今後も更新を楽しみしています。
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えいしん さんへ

コメントいただきありがとうございます。

おっしゃるとおり、人間の身体感覚って、我々が思っている以上に繊細なものだと思います。

また椅子の場合、ほんの少し高さが変わるだけで、机に向かうときの視界までも大きく変わります。

アイディアに行き詰ったとき、椅子の高さを変えると名案が思い浮かぶかもしれませんね。こんど試してみよう!

えいしんさんのコメントのおかげで、そんなことを思いつきました。深謝です。
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