自宅で極上コーヒーを楽しむ探検家
Pen : Platinum - Preppy
Ink : Platinum – Green
コーヒーのいれ方について書くというのは、じつは少々気が重い。
なぜならば、わが日本民族ほど、コーヒーについて一家言のある人が多く、そのくせ、自宅でコーヒーを入れるという習慣が長つづきしない民族も珍しいのじゃないか、と思うからである。
古谷三敏 : 男のウンチク学
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2015年もいよいよ終盤戦です。今年の年末は例年以上に忙しいです。おかげでブログ作成もすっかりご無沙汰してしまいました。
今回はコーヒーについて最近発見したことをお伝えしたいと思います。
漫画家、古谷三敏さんといえば、マンガでは 「ダメおやじ」 くらいしか知りませんでしたが、
調べてみたところ、79歳になられた今でも毎日新聞に 「ぐうたらママ」 という作品を連載しているそうで、そのパワーには恐れ入るばかりです。
その古谷さんは、1984年に 「男のウンチク学」 という本を出されています。
食を中心とした内容で、古谷さんの美学が感じられ、私は大のお気に入りです。大学生の頃から繰り返し読んできました。
その古谷さんはコーヒーについて、上段の言葉を残されています。
古谷さんがこの本を出された1984年当時と現在とで、日本におけるコーヒー事情は大きく変わりました。
昔は一部の例外を除き、喫茶店で出されるコーヒーは薄味で苦いだけの、とても美味しいとは言えないものが主流でした。
それが変化したのは、スターバックスやタリーズの店舗が増えてきた2000年頃からでしょうか。彼らが成功したのは、「パンチが効いて香りが高いコーヒー」 が日本ではまだ未成熟だったからだと思います。同時にこれは、昔からある、「苦くて香りのない、茶色いお茶」 のようなコーヒー店を淘汰することにつながりました。
こうして美味しいコーヒーは日本でも広まり、今やコンビニでもそこそこレベルの高いコーヒーを楽しめる時代になっています。
高品質のコーヒーが気軽に飲める環境に変わったこと喜んでいる一方で、、私は良いコーヒーは家の外飲むものであり、自宅で作って飲むものだとは考えもしませんでした。サイフォンやネルドリップでコーヒーをいれれば美味しいことは知識として知っていましたが、コーヒーマニアでもない私は、面倒くさくて手を出す気になれなかったのです。
そこで、家でも会社でも、こんなかんじの
コーヒーメーカーで作られた、全然美味しくないコーヒーを “眠気覚まし” として、何の疑問もなく長年のみ続けてきました。
そんな私に、今年の12月、変化が生じました。
たまたま入った気軽な雰囲気のレストランが気に入り、何度か通ううちに、食後に出されるコーヒーが妙に美味しいことに気付いたのです。ふと思い立って、お店の方に 「どうやってコーヒーをいれておられるのですか?」 と聞いてみました。
すると、「うちではイタリアのビアレッティ社(Bialetti)の直火式エスプレッソ機を使っています。作るのはもちろんのこと、メンテナンスも楽ですよ」 と言って見せてくれました。
早速、家に帰ってアマゾンで調べてみたら、わずか数千円で買えるじゃないですか。即ポチっ!
このエスプレッソ機でコーヒーを作ってみると、、、確かに美味い! ネスプレッソのような電動式エスプレッソの尖った味とは全く違う、まろやかな味と香りです。
「えっ、こんなお店でしか飲めないようなコーヒーが、いとも安く、簡単に作れるものなのか」 と驚いてしまいました。
自宅で食後に極上コーヒーを入れて飲むことが、こんなにも人生に豊かな時をもたらしてくれるなんて。。。
それにしても、なぜ直火式エスプレッソ機のことを、これまで見過ごしてきたのでしょう。
先に述べたように、美味しいコーヒーをいれる方法があることは、知識としては知っていたのです。しかし、「自宅で作る美味しいコーヒー = 面倒くさい」 という固定観念に縛られていたのですね。ですから、お店で良いコーヒーが供されても、「ああ美味しいなあ」 と感じるだけで終わっていました。
おそらく、これまでも直火式エスプレッソ機で作られたコーヒーは数多く飲んできたはずです。それは目で見て味わって、文字通り五感で楽しんできたものです。
しかし先日、「どうやって作るんだろう?」 という、気まぐれな好奇心の一歩があって初めて、「これまで見えていたつもりだったモノの裏に、見えないモノがあった」 ということを知りました。
今回の経験を通じて、世の中には、まだまだ沢山、「ほんのちょっとの気付きがあれば見えるモノやコト、人生が豊かになるモノやコト」 があるということを改めて思い知らされました。もしかしたら、今回の出来事は私にとって、2015年で一番貴重な経験だったかもしれません。
探険家とは、まだ見ぬ世界を求めて挑む人々です。そうした人たちは、私たちからは縁遠い存在に思えますが、自分が日々の生活において新たなモノやコトを貪欲に見つけようとし続けるならば、それは探検家なのだと思います。
いつの日か、自信を持って、プロフィールの職業欄に 「探検家」 と書けるようになりたいですね。
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