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巨匠フェリーニを前にした塩野七生さん

塩野七生とフェリーニ

ル・グラン162 ローラーボール (モンブラン) - ペン

もう十数年も前のことと思うが、NHKの依頼で、フェリーニにインタビューしたことがある。私は、ひどく緊張した。(中略)
というわけで、天才を前にする緊張にプラスして恐怖まで感じていた私だったが、それでも戦略は立てた。
まず第一に、私自身の思いや感想や意見を、絶対にさしはさまないこと。第二に質問は具体的に、短くすること。(中略)
結果は、一時間の約束が六時間になった。(中略) 彼も、しゃべったのですね。その理由を、フィルム交換を待つ間に、彼が言った。 「あなたは、いつものインタビュアーのように、自分の意見をペラペラとしゃべらないところがいい。」 戦略は成功したのだ。私は彼の俳優論を聴きたかったとする。それを、私はこう問うただけなのだ。 「あなたは、マルチェロ・マストロヤンニとよく仕事なさいますが、それはなせ?」 こう訊くと、マエストロは、十五分もしゃべってくれるのである。

塩野七生 : 人びとのかたち

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塩野七生さんの作品は好きでよく読んでいます。テレビでそのお姿を見たところ高い品格を感じさせる素敵な方でした。
塩野七生さん

そのうえ頭の切れ味は抜群ですから、人の値打ちなんてたちどころに見抜いてしまうわけでして、私なんぞが塩野さんを前にしたらタジタジになってしまうでしょう。

その塩野さんがイタリア映画界の巨匠、フェデリコ・フェリーニへのインタビューにおいては、「恐怖まで感じた」 と正直に述べられています。 (下はフェリーニの写真。余談ながら、私がフェリーニ作品を最後に観たのは20年以上前でして、どうも苦手な印象が残っています)
フェリーニ

塩野さんはその恐怖をどのように乗り越えたのか。そのヒントが上述の文章に隠されていると思います。

まず、ある仕事を任されたとき、最も重要なことは、”その仕事における成功” をどう定義するかだと思うのです。

知的ビジネスにおける成功、あるいは失敗というものは、よく考えると定義が難しいものです。将棋のように勝ち負けがはっきりしているものは少ない。ですので、「この仕事においては、ここまでできたら成功」 という定義をあらかじめ決めておかないと、その目標に向かっての作戦、ダンドリも組めず、仕事後の成果も不明なままになってしまいます。

ひるがえって、インタビューという仕事は成功の定義が難しいもののひとつだと思います。何を聞いたって、「インタビューの仕事をしました」 と言えるわけですから。

難しいがゆえに、インタビュアーは、よくよく考えると意味不明の質問をしています。例えば、スポーツの試合後よくある質問に 「今日の試合、振り返ってみてどうでしたか?」 というものがありますけれど、こうした漠然とした質問は答える選手を悩ませてしまいます。

塩野さんの場合、上述の文には記されていませんが、フェリーニとのインタビューにおける成功の定義をきっちり考えたはずです。なぜなら、それが無かったとしたら、「作戦を考える」 ということも無いからです。

塩野さんが定義した成功とは、この場合、「映画ファンが、フェリー二のインタビュー番組を見て、『面白かった』 と満足してもらうこと。そのために、彼が自ら話したがる環境に持ち込み、普段のインタビューでは話さないようなホンネや裏話を語ってもらうこと」 だったと想像します。

そこで採った作戦として、塩野さんは次の2つを述べています。

作戦1: 私自身の思いや感想や意見を、絶対にさしはさまないこと

作戦2: 質問は具体的に、短くすること

この作戦は相手が黒澤 明監督だったら違ったものになったかもしれません。イタリア人のフェリー二には、この作戦がベストだと塩野さんは判断したわけですね。

この作戦を決めた後に、塩野さんは最後に 「何を質問したらよいのか」 を考えていったのでしょう。フェリーニの姿を想像しながら、イメージトレーニングを重ねたにちがいありません。

こうした周到な準備によって自信を持ち、恐怖に打ち勝ち、塩野さんはインタビューを成功させたのだと思います。

さて、もし私が塩野さんと同じ立場だったら、まず 「何を質問したらよいのか」 から考えていってしまうと思うのです。しかし、それでは上述のとおり、インタビューの仕事が終わった後、何が成功なのかもよくわからないまま、「あ~、今日はいいインタビューできたんじゃないかな」 と自己満足で終わってしまうことでしょう。

大きなプロジェクトだけではなく、ひとつひとつの仕事、たとえば小さな会議であっても;

1)目標の明確化
2)作戦
3)ダンドリ
4)実行
5)成果の確認

これを常に自分が意識し、そしてチームの活動であればチームのメンバーと意識を共有すること、これがプロとしての仕事の質を高めることにつながるはずです。

そんなことを塩野さんの話を読んで感じました。
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