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美 と 知 と 歳 と

安野光雄 きれいと美しい


カスタムヘリテイジ912 (FA) - パイロット (ペン)
霧雨            - パイロット (インク)


岸田劉生の『美の本体』という、むかしよく読まれた本があります。その中で、「『美しい』と『きれい』とはちがうのだ」という一行だけが印象に残っています。(中略)
「きれい」というのは、「汚い」の反対語ですが、「美しい」というのは醜悪な部分までも含んでいます。たとえば、グリューネヴァルトの作になる、コルマール(フランス)の教会の祭壇画に描かれたキリストは、目を覆うほどのおできや腫れ物で覆われています。(中略)
「美しい」と感じる感覚は、一口にいうと、心を動かされることです。

安野光雅 ― 絵のある人生

グリューネヴァルト
グリューネヴァルト : イーゼンハイム祭壇画
====================

このブログを立ち上げてから、「美」というものは何だろう、と何度も自らに問い続けてきました。

先日、画家の安野光雅さんが書かれた「絵のある人生」という本をを読んで、この問いに対する理解が深まった気がします。

・「きれい」と「汚い」。これはどちらかというと、外観(視覚)に基づく言葉。

・「美しい」と「醜い」。これはどちらかというと、(人の)内面に基づく言葉。

われわれは、日々の生活において 「きれい」 と 「美しい」 を混同しがちですが、なんとなく、そんな使い分けをしているのではないでしょうか。

例えば、「醜い心」という使い方はありますが、「汚い心」という使い方はあまり見ません。

また、「美しい旋律」という言葉はありますが、「きれいな旋律」という言葉には違和感を感じます。このことは、「旋律」という言葉が、視覚ではなく聴覚に基づく言葉であり、「聞く」という行為は人間の内面と結びついているということを指しているのではないでしょうか。

ものごとに対する価値判断というのは人それぞれです。例えば、あるモノを指して、「美しい」と思う人もいれば、「美しくない」と思う人もいます。

この価値判断における個人差を考えた場合、外観の価値判断となる「きれいか否か」のブレ幅は狭く、内面の価値判断となる「美しいか否か」のブレ幅は広いと言えそうです。 その理由は何でしょうか。

まず、「美しいということ」の意味を考えてみたいと思います。

安野さんは上述のとおり;

― 「美しい」と感じる感覚は、一口にいうと、心を動かされることです。

と述べられています。

このことは、以前、佐々木健一教授の「美学への招待」をご紹介した折にお伝えしたとおり、「 ”beautiful” の訳語としては、 ”すごい” がピッタリ 」 という話と重なります。

すなわち、「美しいと感じること」は、「感動すること」に他ならない、といえそうです。

ではもう一歩進めて、感動を誘発する要素は何なのでしょうか?

私は知性だと思うのです。

ということは、人の知性レベルが上がれば、それに応じて美への感受性が高まるということになります。

これは例えば、若い頃、ある骨董品に接して美しいとも何とも感じなかった人が、知性に磨きがかかった何年後かに同じ骨董品に接したら美しいと感じた、という状況をイメージするとご理解いただけると思います。

一方、「きれいと感じること」に対しては、若い頃も、齢をとってからも、価値判断は変わらないのではないでしょうか。

すなわち、「美しいか否か」の価値判断は、同じ人ですらその事柄に接した年齢で価値判断が変わりうるほどですから、「きれいか否か」の価値判断よりも個人差が広がるのは当然のことと言えるでしょう。

さて、このように考えると、知性を向上させる努力を惜しまない人は、歳を重ねるにつれ、若い頃には見えなかった美しいものが見えてくる、感動する機会が増えてくる、というということになりますね。

一般的に、人は歳をとることを「老化」と呼んだりして、ネガティブにとらえています。たしかに、肉体は年々衰えてゆきます。しかし、歳とともに知性を向上させる人は、美の感受性が高まり、日々の生活において、感動する機会が増えてゆきます。それは、肉体の衰えをはるかに越えるほどの喜びではないでしょうか。

「齢をとるって、すばらしい」 と皆が思えるような世の中に変わっていくのが、人間として本来のあるべき姿ではないかと私は思っています。


+++++++++++++++++++++++++
(追記) 2015年5月30日

ネットを見ていたら、すばらしい言葉を目にしました。

「老年は山登りに似ている。 登れば登るほど息切れするが、視野はますます広くなる」
イングマール・ベルイマン  (スゥエーデンの映画監督)

頂上に立ったとき、一番美しい景色が見えるのでしょうね。
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