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草間彌生の作品は子供の絵か

千住 博   作品にかける時間
パイロット : カスタム ストライプ (F)
エルバン  : モクセイソウグリーン

千住 博 : 芸術とは何か

物理的に1枚の作品を描く時間は、畳1畳分で一週間かかるか、かからないかです。(中略)
私は今56歳ですが、最近描き終わった、新しい青地の滝の作品を描くのに56年かかった、ということが正しい言い方でしょう。

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今年のお正月、NHKで「草間彌生 わたしの富士山~浮世絵版画への挑戦~」という番組が放映されました。
草間彌生 富士山

これは、草間彌生さんが富士山をテーマにした絵を描いた後、アダチ版画研究所のサポートのもと、江戸時代からの伝統を生かした浮世絵版画の作品にするまでを描いたドキュメンタリーです。

浮世絵版画の職人さんたちが、苦労しながら草間さんの作品を版画にしていく様は、大変興味深いものがありました。

しかし、私にとって面白かったのは、この番組を横でチラチラ見ていた父のコメントでした。

「草間彌生の絵なんて、子供の絵と同じじゃないか。あっという間に書いたものが何千万円もするなんて馬鹿げている」

私自身、草間彌生さんのファンではありませんが、直感的に「その考え方は間違っているのではないか」と思いました。しかしその場では、間違っている理由を明確に伝えることはできなかったのです。

われわれが現代アート作品に対して「なんでこんな高いんだ?」と疑問を持つ理由は何なのか?

父の言葉を思い起こすうちに、答えがみえてきました。

現代アートは、作品の製作に費やす時間が少ないケースが多いため、「製作にかける時間が少ない = 価格も低いはず」 と考えがちなのがその理由ではないでしょうか。ということは、「名画は、その製作に多くの時間がかけられるべきである」 というのが、一般的な認識ということになります。

これは、マルクスの労働価値説に近い考え方といえるでしょう。絵画に限らず、我々がモノの価値を考えるとき、「これができるまで、どれだけ手間がかけられたのか」 という考え方をしてしまうのは、ごく自然な流れだと思います。

しかし、現代社会におけるモノの価値は、労働価値説と全く関係のないものになっています。

この謎を考えるにあたって、骨董品の価値というものはひとつのヒントになるかもしれません。

古山浩一さんの 「万年筆の達人」 に次の記述がありました。
古山浩一さん 万年筆の達人

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ヴィンテージには現代のものが失ってしまった何かが存在している。以前、益子の古道具屋でボロボロの懸硯(かけすずり)を買った。あんまり状態がひどいので 「これもう少し安くならないの」 と店のいかにも海千山千のお婆さんに言った。そしたらじろりと一瞥して 「あんたあね、これはそのものだけじゃない、その時代が付いとるんじゃ、あんたあ、その時代も買ってるんじゃ!」 と言って煙に巻かれてしまった。しかしその言葉はいい言葉だなと思って、今でも記憶している。
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そう、我々は「モノ」そのものだけでなく、「モノに伴う時間」 も買うことがあるんですね。

そのように考えれば、上述の 「私は今56歳ですが、最近描き終わった、新しい青地の滝の作品を描くのに56年かかった、ということが正しい言い方でしょう」 という千住 博さんの言葉も理解できます。

「モノに伴う時間」 は目に見えません。それゆえ、鑑賞者側の眼力が問われていると言えます。草間さんの作品が高額であっても売れるのは、「草間さんのこの作品が生み出されるまでにかけられた時間」 を見える人が多いということが、要因のひとつかもしれません。

現代アートのひとつの作品を前にして、「その画家のヒストリーを感じ取れるか否か」 という観点から眺めてみれば、また新たな発見があるかもしれませんね。
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