
ペン : パイロット ― カスタムヘリテイジ912 (FA)
インク : パイロット ― 色彩雫 秋桜
玉村豊男 :
パンとワインとおしゃべりと それが、ベトナム・サンドイッチの屋台だった。
パンは、太めのバゲットといったところ。
注文すると、一本を半分に切ったのを二つに開き、まず、レバーペーストのようなものを塗った。そして、醤油をパラリ。あとはお好みで、酸味の効いたベトナム風の生ソーセージでも、焼き豚でも、干海老でも、青菜でもネギでもトマトでも、大根と人参をせん切りにしたナマスでも・・・なんでも好きなものを言ってはさんでもらう。最後に、辛い唐辛子と香りの強い香菜を加え、全体にニョクマム(魚醤)を振りかけてできあがり。
見ていると、いったいどんな味になるのか、不安な気持ちが先に立つ。まったく、どういう取り合わせなんだ!
が、食べてみると・・・・これがなんとウマイのなんの、史上最高のミスマッチ!と私は思わず唸ってしまった。
不思議な、筆舌に表現し難い、しかし感動的な味である。
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ベトナムへ初めて仕事で行ったとき(たぶん1998年)、いろいろと驚いたことがありました。ベトナム戦争のときに作られた
クチ・トンネルはそのひとつでしたが、ベトナムのサンドイッチの美味しさも忘れられない思い出です。
ちょうど昼時、案内してくれた駐在員が、「お昼は簡単に屋台のサンドイッチではどうですか?」 と提案してくれました。「えっ、サンドイッチですか? せっかくベトナムに来たので、もっとベトナムらしいものを食べてみたいような気もするんですけど、、、」 と答えたら、「いや、ベトナムのサンドイッチは、我々がイメージする普通のサンドイッチとは違うんです。一度、食べてみてくださいよ」と言われました。
そこで車を止めて寄ったのが、下の写真のような屋台です。

駐在員氏が注文すると、手際よく店の方がサンドイッチを作ってくれました。その様子は上述の玉村さんの記述どおり。
最後に香菜、酢漬けの唐辛子、ニョクマムをふりかけるのを見て、びっくりしました。

伝統的なフランスパンの中身はまさに東南アジア料理そのもの。「ちょっと気持ち悪いなあ、、、」というのが正直な気持ちでしたが、おそるおそる食べてみたところ、いやはや、人間が創造するモノの可能性に限界は無い、と思い知らされました。
あらゆる組み合わせの中に、創造のチャンスがあります。アテンドしてくれたら駐在員が、「後で 『体調を崩した』 なんて文句を言われたら大変だから、日本から来た方に屋台の食べ物なんか出せない」 なんて保守的な人だったら、私はこのサンドイッチを知らないままだったでしょう。彼との出会いに感謝しています。
このサンドイッチ、ベトナム語で「バインミー」と言うそうで、ウィキペディアにも出ています。東京の高田馬場にはこの専門店もあるようですから、いつか行ってみたいです。
自分で作ることもできます。その場合、フランスパンは、ベトナム風の皮がカリッで中はサクッとしたものが向いています。中がモチモチの固めだと、このサンドイッチには向きません。欠かせないものは、(レバー)ペースト、香菜、魚醤、あとは酸味(レモンか酢)です。これ以外は上述の玉村さんの記述どおりお好みで。
このベトナム・サンドイッチと似た発想のものが、日本にもありますね。今やどこにでもある一皿になってしまった、明太子スパゲティなんてその典型ではないでしょうか。
アジアを旅するヨーロッパの方は、ベトナム・サンドイッチと明太子スパゲティの共通点を感じてくれるかもしれません。こうやって、食というものは進化していくものなのでしょう。
寿司をはじめとした日本食も同様に、海外で新たな作品に生まれ変わって我々に驚きを与えて欲しいものです。
= 追記 =
ベトナムは、フランスの影響でしょう、生産するコーヒーの品質にも定評があります。熱いコーヒーも良いのですが、サンドイッチ同様、ベトナム文化が生んだ、独特のアイスコーヒーが、これまたワンダフル! この極上アイスコーヒーがどこでも格安で飲めるので、ベトナムのスターバックスでアイスコーヒーを売るのは難しいのではないでしょうか。今度ベトナムに行ったら確かめてみたいです。
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