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羊羹とカマンベールの奇妙な組み合わせ

羊羹とカマンベールチーズ1

欧米路線など、長距離路線のビジネスクラスに乗ると、食後のオプションとして、デザートかチーズを選択することができます (下の写真)。ちなみに、「デザートかチーズ」 と記しましたが、欲張って両方を取っても文句言われたことはありません。

ビジネスクラスのチーズプレート

このチーズプレートには、だいたいアプリコットなどのドライフルーツ、もしくはジャムが付きます。食べてみると、チーズとドライフルーツって、相性が良いんですよね。チーズの塩味と甘味が混じり合い、チーズの良さが引き立つ感じがします。

そんな記憶がかすかに残っていたからでしょう。冷蔵庫の奥底に、賞味期限がはるか前に切れていた虎屋の羊羹を目にしたとき、買い置きしておいたカマンベールチーズと合わせることを思いつきました。

そもそも、羊羹って、最近は昔に比べると甘さ控えめになったとはいえ、それでも甘い! 我が家ではなかなか消費が進まない存在です。

「羊羹の甘味とチーズの塩味はきっと合うはず」 と信じ、上の写真のようにスライスしてみました。

食べてみると、カマンベールの少しクセのある香りとコクが、羊羹の甘味と調和して、各々の素材の旨みが際立つのがわかりました。私は、ジョエル・ロブションがこのデザート食べたら、「トレビアン!」 と言ってくれると確信しています。

羊羹とカマンベールチーズ2

スライスのやり方をこのように変えるのも一興かと。

ちなみに、今回はカマンベールチーズを使いましたが、他のチーズでも楽しめると思います。けれども、コクのあるカマンベールがベストコンビネーションでしょう。これに合うお酒は、ウイスキーのオンザロック、もしくはコニャックかな。

あるいはこれからの季節、よく冷やした水ようかんに、マスカルポーネチーズを添えるコンビネーションも映えそうです。この場合は、ビッシリ冷えたシャンパンがお似合いだと思います。

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<追記>
この羊羹とカマンベールのサンドイッチを、天ぷら、もしくは衣をつけてフライしたら、チーズが溶けて、これまた別次元のデザートに変身するかもしれません。揚げ物をめったにやらない我が家では、なかなか実現しそうもありませんが。。。
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魯山人の愛した海苔の茶漬け

魯山人の愛した海苔茶漬け
Pen : MONTBLANC - 146 (EF)
Ink : Pelikan – Royal Blue

これから私が話そうとするのは、もっと手軽なのりの茶漬けである。
それは、いいのりをうまく焼いたものか、焼きのりのうんと上等のを、熱いご飯の上に揉みかけ、その上に醤油をたらし、適当にわさびを入れて、茶を注げばよろしい。

北大路 魯山人 : 魯山人味道
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海原雄山
グルメまんが 「美味しんぼ」 における、もう一人の主人公といえば海原雄山。

魯山人
前稿で 「まるで美食の限りを尽くした大家が、最後に行き着いた究極の美食は お茶漬けだった、というようなかんじです」 と書いたとき、海原雄山のモデルと称される、北大路 魯山人のことを思い出しました。

魯山人が残した功績、それは 「美しい器を用いることで、料理はその輝きを増す」 ということを見出した点にあると言われています。魯山人の没後も、日本の料理界は魯山人の思想を礎として発展を続けており、今日では和洋中を問わず、数多くのレストランが器で楽しませてくれるようになりました。

「器へのこだわり」 は長い間、日本の特徴だったわけですが、近年、この流れは世界へ広がりを見せています。世界最先端のレストランにおいては、シェフが器に細心の注意を払うケースがよく見られるようになりました。

mirazur 01

mirazur 1

* 写真は ”The World's 50 Best restaurants 2016” で、第六位に選ばれたフランスのMirazurの料理です。

そう考えますと、魯山人は料理界に大いなる変革をもたらした存在と言えるわけでして、日本は世界に向けて、魯山人の業績を積極的にPRしてゆく必要があると私は感じています。

話はかわりますが、「魯山人味道」 という、魯山人が記した、美食に関するエッセイを集めた興味深い本があります。
魯山人味道

この本にはお茶漬けだけで、それぞれ個別のエッセイとして、次の十章がおさめられています。

― お茶漬けの味
― 納豆の茶漬け
― 海苔の茶漬け
― 塩昆布の茶漬け
― 塩鮭・塩鱒の茶漬け
― 鮪の茶漬け
― てんぷらの茶漬け
― 鱧・穴子・鰻の茶漬け
― 車蝦の茶漬け
― 京都のごりの茶漬け

これを見ただけで、魯山人がどれほどお茶漬けを愛していたかがわかりますね。

海苔茶漬け
いろいろと並ぶお茶漬けのなかで、最もシンプルなのは 「海苔のお茶漬け」 でしょう。

なんのことはない、ただの海苔茶漬けであっても、このエッセイを読むと食通としてならした魯山人ならではのこだわりが随所に感じられます。

まず、
― 海苔の分量は、一椀に一枚か一枚半を使うこと。
― 茶は上等の煎茶をよしとするが、鰹節と昆布の出汁をかけてもよい
としています。

そして、肝心のポイントは 「海苔の焼き方」 にあると説きます。海苔の焼き方は、「その人の料理に対する教養がものをいう」 とまで魯山人は言うのですから、魯山人に料理を供した方は、気の休まる時が無かったことでしょう。

私はうかつにも知りませんでしたが、海苔は両面を焼いてはいけないそうです。両面焼くと、海苔の香りが失せてしまうからだそうです。

海苔を焼くのに電気コンロが一番よいとのこと。

電気コンロ
魯山人のいう“電気コンロ”は、おそらく上のようなモノだと思います。この電気コンロの使い方ひとつでも、魯山人ならではのこだわりがありました。

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これもスイッチを入れて、すぐにのりをかざすのはいけない。コンロの熱量が含んでいる湿度がなくなるまで待ってから、焼く心得があってほしい。
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こうしてできた海苔茶漬けは、「こんな茶漬けをよろこぶ者は、通人中の通人に属するだろう」 とのこと。天下の食通、魯山人にそういわれてしまうと、海苔茶漬けを食べて、「やっぱり海苔茶漬が最高だなあ」 という言葉が思わず漏れてしまうような自分になりたくなってしまいます。

「海苔茶漬け」 のエッセイの最後は次の言葉でしめくくられています。

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すべての料理のうまい秘訣は、こんなちょっとした注意にある。なるほどそうだろうと分ってみても、聞くだけではだめだ。直ちに、よし来た - とばかり実行する人であってほしい。
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この言葉が書かれたのは昭和七年。

今から84年前に魯山人の残したこの言葉には、料理にかぎらず、全ての仕事において通じる真実が潜んでいるといえそうです。

伝説のステーキハウス、ピーター・ルーガー訪問記

ピータールーガー ポーターハウス 2人前

ニューヨークのブルックリンにある「ピーター・ルーガー」というステーキハウス。
(Peter Luger Steak House : 178 Broadway, Brooklyn, NY 11211-6131)

この店の名を私が初めて知ったのは、1994年、初めての海外出張の時でした。ユナイテッド航空の機内誌に掲載されていた「全米のステーキハウス、Best 10」という記事の、第一位にその名はありました。

ステーキ好きの私は、「いつの日かピーター・ルーガーに行ってみたい」という夢を抱いてきましたが、そのチャンスはなかなか訪れませんでした。仕事でニューヨークへ行くことはあっても、場所がマンハッタンから少し離れているため、限られた時間の中では行きにくいのです。

しかし、それでも、「いつかは行けるだろう」と思い、その機会が訪れる日を待っていました。

そんなふうに過ごしてはや22年。気がつけば、ビジネスマン人生も後半戦に入っています。引退後、プライベートでニューヨークに行くことはたぶん無いでしょうから、焦ってきました。

そんな中、5月にニューヨークへの出張が決まったとき、「たとえどれほどスケジュールがタイトであっても、ピーター・ルーガーだけは絶対に訪問しよう」と固く心に誓ったのでした。

そしてついに5月6日、長年の夢が実現する時がやってきました。
ピータールーガー 入口

「Peter Luger」の看板を目にしたときは、感慨深いものがありました。ステーキ大好き人間の私にとって、ピーター・ルーガーは、それくらい思い入れの深いものでした。

ただ、そのステーキの味については、過度な期待はしていませんでした。ステーキは、肉に塩をして焼くだけのシンプルな料理です。シェフの技術や想像力により大きな差が出るフランス料理などとは異なりますので、一流ステーキ店のレベルに達してしまうと、そこから先は他店と大きな差をつけにくいと言えます。

ですので、私の興味は、「ステーキそのものでは大きな差がつくとは思えないのに、なぜピーター・ルーガーが他店を引き離して全米一と称されるのであろうか?」という点ありました。

まず店内に入りますと、さすが創業1887年のオーラといいますか、昔の映画で見るような、レトロな時代のアメリカの雰囲気が漂い、「これ、いいなあ」と思いました。

席についてメニューを渡されます。ここに来る前から「ポーターハウス(いわゆるTボーンステーキ)を食べよう」と私は決めていました。驚いたのは、この店のメインディシュが、ほぼポーターハウスに限定されていることです。
ピータールーガー メニュー

普通のステーキハウスは、「ニューヨーク・ストリップ」、「サーロイン」、「フィレ・ミニヨン」、「リブ・アイ」等々のステーキを用意しているわけですが、この店のメニュー中央をご覧いただくとわかるとおり、「ステーキ二人前」、「ステーキ三人前」、「ステーキ四人前」、、、としか書かれていません。「ポーターハウス」とは書いてありませんが、何も書いていなくても、店側と客側が互いにポーターハウスであることを認識しているわけです。この仕組み、すごいと思いました。ちなみに、中央下段に、申しわけなさそうに、リブ・ステーキだけが記載されています。

ステーキといえば、赤ワイン。
ピータールーガー ワインリスト

ワインリストをみると、上から三行目に店名の「Peter Luger」という名のハウスワインがあるではないですか。お値段も65ドルとお手軽なので、ウエイターに「このワイン、イケます?」と聞いてみました。

すると、「いや~、私、ワインはよくわかんないですけど、多分いいんじゃないですか。とにかく、うちの店は、料理は最高だけれど、サービスは最低なんで、ご勘弁願います」という回答。この見事な切り返しには思わず大爆笑で拍手してしまいました。

さて、肝心のステーキ。ミディアム・レアの注文どおり、見事なミディアム・レアでした。肉質、焼き加減、塩加減、どれも完璧。しかし予想どおり、他の北米の一流ステーキ店と比べ、この点では大きな差はありませんでした。

大きな差は、そのオイルにありました。冒頭の写真だけではわかりにくいのですが、ステーキの乗った皿は高さが傾いており、写真では右上にオイルが溜まるようになっています。

このオイル、塩味はありません。牛脂と上質なピーナツオイルなどをブレンドして作られていると見ました。切り分けたステーキをこのオイルに漬けて食べると、旨みが増すんですね。こうしたオイルは他のステーキ店では見られないものです (*ピーター・ルーガーから派生した店で、これと似たオイルを出す店があります)。

ステーキを切ってはオイルに漬けて味わうことしばし、「ピーター・ルーガーの名を不動のものにしているのは、この門外不出のオイルにあるんだな」と私は思いました (「Peter Luger ブランド」の赤ワインも、goodでした)。
ピータールーガー ワイン

最初にオーダーした二人前のポーターハウスは、もう一人の友人と争うようにして食べたため、すぐに消えてしまいました。そこで、追加でリブ・ステーキを注文。こちらの肉質は、ポーターハウスのサーロイン側と似たかんじでした。ミディアム・レアでお願いしたのですが、来たのはレアだったので、「ちょっとだけ焼いてくれる?」とお願いしたところ、戻ってきたのはミディアムでした。ミディアムでも美味しかったです。それでも、このお店では、やはりポーターハウスにとどめを刺すと思いました。

デザートは、友人と二人でアップルパイとチーズケーキをシェアしました。どちらもほどよい甘さで美味しかったのですが、アップルパイのホイップクリームの量にはびっくりしました。この驚きのボリュームが、アメリカらしくて良いです。
ピータールーガー アップルパイ

Peter Lugerは、レストン周辺も下町風、店内も気さく、料理も気取らず、とっても落ち着く店だと思いました。ただし、お味と値段は一流ですね。

ステーキファンならば、一生に一度は訪れる価値のある、名店だと思います。

自宅で極上コーヒーを楽しむ探検家

家でいれたコーヒー

古谷三敏 コーヒー

Pen : Platinum - Preppy
Ink : Platinum – Green

コーヒーのいれ方について書くというのは、じつは少々気が重い。
なぜならば、わが日本民族ほど、コーヒーについて一家言のある人が多く、そのくせ、自宅でコーヒーを入れるという習慣が長つづきしない民族も珍しいのじゃないか、と思うからである。

古谷三敏 : 男のウンチク学
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2015年もいよいよ終盤戦です。今年の年末は例年以上に忙しいです。おかげでブログ作成もすっかりご無沙汰してしまいました。

今回はコーヒーについて最近発見したことをお伝えしたいと思います。

漫画家、古谷三敏さんといえば、マンガでは 「ダメおやじ」 くらいしか知りませんでしたが、
ダメおやじ

調べてみたところ、79歳になられた今でも毎日新聞に 「ぐうたらママ」 という作品を連載しているそうで、そのパワーには恐れ入るばかりです。

その古谷さんは、1984年に 「男のウンチク学」 という本を出されています。
男のウンチク学

食を中心とした内容で、古谷さんの美学が感じられ、私は大のお気に入りです。大学生の頃から繰り返し読んできました。

その古谷さんはコーヒーについて、上段の言葉を残されています。

古谷さんがこの本を出された1984年当時と現在とで、日本におけるコーヒー事情は大きく変わりました。

昔は一部の例外を除き、喫茶店で出されるコーヒーは薄味で苦いだけの、とても美味しいとは言えないものが主流でした。

それが変化したのは、スターバックスやタリーズの店舗が増えてきた2000年頃からでしょうか。彼らが成功したのは、「パンチが効いて香りが高いコーヒー」 が日本ではまだ未成熟だったからだと思います。同時にこれは、昔からある、「苦くて香りのない、茶色いお茶」 のようなコーヒー店を淘汰することにつながりました。

こうして美味しいコーヒーは日本でも広まり、今やコンビニでもそこそこレベルの高いコーヒーを楽しめる時代になっています。

高品質のコーヒーが気軽に飲める環境に変わったこと喜んでいる一方で、、私は良いコーヒーは家の外飲むものであり、自宅で作って飲むものだとは考えもしませんでした。サイフォンやネルドリップでコーヒーをいれれば美味しいことは知識として知っていましたが、コーヒーマニアでもない私は、面倒くさくて手を出す気になれなかったのです。

そこで、家でも会社でも、こんなかんじの 
コーヒーメーカー

コーヒーメーカーで作られた、全然美味しくないコーヒーを “眠気覚まし” として、何の疑問もなく長年のみ続けてきました。

そんな私に、今年の12月、変化が生じました。

たまたま入った気軽な雰囲気のレストランが気に入り、何度か通ううちに、食後に出されるコーヒーが妙に美味しいことに気付いたのです。ふと思い立って、お店の方に 「どうやってコーヒーをいれておられるのですか?」 と聞いてみました。

すると、「うちではイタリアのビアレッティ社(Bialetti)の直火式エスプレッソ機を使っています。作るのはもちろんのこと、メンテナンスも楽ですよ」 と言って見せてくれました。

早速、家に帰ってアマゾンで調べてみたら、わずか数千円で買えるじゃないですか。即ポチっ!
Bialetti 2

Bialetti 1

このエスプレッソ機でコーヒーを作ってみると、、、確かに美味い! ネスプレッソのような電動式エスプレッソの尖った味とは全く違う、まろやかな味と香りです。

「えっ、こんなお店でしか飲めないようなコーヒーが、いとも安く、簡単に作れるものなのか」 と驚いてしまいました。

自宅で食後に極上コーヒーを入れて飲むことが、こんなにも人生に豊かな時をもたらしてくれるなんて。。。

それにしても、なぜ直火式エスプレッソ機のことを、これまで見過ごしてきたのでしょう。

先に述べたように、美味しいコーヒーをいれる方法があることは、知識としては知っていたのです。しかし、「自宅で作る美味しいコーヒー = 面倒くさい」 という固定観念に縛られていたのですね。ですから、お店で良いコーヒーが供されても、「ああ美味しいなあ」 と感じるだけで終わっていました。

おそらく、これまでも直火式エスプレッソ機で作られたコーヒーは数多く飲んできたはずです。それは目で見て味わって、文字通り五感で楽しんできたものです。

しかし先日、「どうやって作るんだろう?」 という、気まぐれな好奇心の一歩があって初めて、「これまで見えていたつもりだったモノの裏に、見えないモノがあった」 ということを知りました。

今回の経験を通じて、世の中には、まだまだ沢山、「ほんのちょっとの気付きがあれば見えるモノやコト、人生が豊かになるモノやコト」 があるということを改めて思い知らされました。もしかしたら、今回の出来事は私にとって、2015年で一番貴重な経験だったかもしれません。

探険家とは、まだ見ぬ世界を求めて挑む人々です。そうした人たちは、私たちからは縁遠い存在に思えますが、自分が日々の生活において新たなモノやコトを貪欲に見つけようとし続けるならば、それは探検家なのだと思います。

いつの日か、自信を持って、プロフィールの職業欄に 「探検家」 と書けるようになりたいですね。

まっとうなイタリアンを見定める

まっとうなイタリアンを見定める

ペリカン - M400 トータスシェル/ホワイト 細字 : ペン
ペリカン - ブラウン : インク

パスタというのは、めん類の総称です。
そして、パスタと切っても切れない関係にあるのが母親の存在です。大げさにいうなら、イタリアの母親家長的な雰囲気に密接しているのがパスタなのです。

ソフィア・ローレン : キッチンより愛をこめて
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“イタリアを代表する女優”といえば、ソフィア・ローレン ( 1934年生 ) をおいて他にいないでしょう。
ソフィア ローレン

個性的な顔立ちで、決して典型的な美人とは言えませんが、印象に残る女優さんだと思います。

大女優のソフィア・ローレンは料理上手だったようで、その彼女が書いた料理本が、「キッチンより愛をこめて (IN CUCINA CON AMOR) 」です。日本版の初版が1974年。私が持っているのは1977年の第六刷です。
キッチンより愛をこめて

この本には、それぞれの料理に対するソフィア・ローレンの思い出や彼女のオリジナルの工夫などのコメントがそえられており、読み物として面白い内容になっています。私は中学生のときにこの本を手にし、それ以来、この本のレシピでいろいろなイタリア料理を作ってきました。料理を作る楽しさを教えてくれた本のひとつです。

本書が出版された1974年は、イタリア料理が日本の家庭に浸透する前でした。次のような訳語でそれがわかります。

ボンゴレ => 本書 「アサリ入りスパゲティ」

カルボナーラ => 本書 「ベーコンと卵のスパゲッティ」

ミネストローネ => 本書 「野菜入りスープ」 

トーストしたパンに、トマトの切り身をのせて食べるブルスケッタ (Bruschetta) は、今やどこのイタリア料理店でも見ることができます。
ブルスケッタ

本書でこの料理の訳語は 「パンのオリーブ油焼き」 となっています。

レシピは 「パンを焼き、半分にスライスしたニンニクの断面をパンにこすりつけ、少量のオリーブオイルをパンにかけて、塩をふって食べる」 となっており、トマトは出てきません。

もしかすると、トマトをのせて食べるレシピは、イタリア本国でも1970年代以降に広まったものなのかもしれませんね。

さて、本書でソフィア・ローレンは、「パスタというのは、めん類の総称です」 と述べていますが、実はイタリア語で“パスタ”とは“ねり物”のことです。歯磨き粉も“パスタ”ですし、パンを焼く前の、タネがドロドロした状態も“パスタ”です。

いつ頃からでしょうか。日本では“スパゲティ”のことを “パスタ” と呼ぶようになってしまいました。テレビに出てくるイタリア料理店の有名シェフも、普通にスパゲティのことをパスタと言っています。今や、スパゲティという言葉を使うと、少しダサいようなイメージすらありますね。

しかし、これはトンデモナイ誤解です。パスタには数多くの種類があり、スパゲティはパスタの一種にすぎません。

したがって、海外のレストランで 「パスタをお願いします」 なんてオーダーしたら、「どのパスタですか?」と逆に聞き返されてしまいます。

2020年には東京オリンピックもあるわけですから、パスタ=スパゲティ、という変な和製イタリア語は修正してほしいものです。

もうひとつ、これもよくわからないのが、日本のイタリアンレストランでスパゲティを食べる際、スプーンの上でくるくる巻いて食べる人が多いことです。もはや、日本ではスパゲティを食べる際、これが正式なマナーに化してしまった感すらあります。
スパゲティのクルクル巻き

このようなスタイルは、左手に持ったフォークの背にライスを乗せて食べるスタイルほどではありませんが、
フォークの背にライス
本国イタリアはもちろん、他の欧米諸国で私はほとんど見たことがありません。アメリカで何度か目撃したかぎりです。

いつからこの奇妙なスタイルが日本で一般的になったのでしょうね? そのうち、厚切りジェイソンのネタにされてしまうかもしれません。

さて、前置きが長くなりましたが、表題の 「まっとうなイタリアンを見定める」 の話に戻ります。

イタリアンはフレンチより料理の工程がシンプルであり、各工程で求められる技術の難易度はフレンチより低いため、アマチュアでもレシピどおりに作ればプロと大差ない味に作れる料理が多いです。それに対してフレンチは、レストランと同レベルの味を家庭で再現するのは容易でありません。

したがって、西洋料理で比べる場合、イタリアンはフレンチに比べて、美味しい料理を出すレストランと、まずい料理を出すレストランの実力差が反映されにくいと言えます。

それでも、せっかくプロの料理を食べるならば、美味しいレストランに行きたいものです。ではどうやってイタリア料理店の実力を見極めればよいのでしょうか。

私は、初めて行くイタリア料理店では、必ずある品を注文するようにしています。

それはニョッキかラビオリです。

この二品は、店による実力差が如実に出てしまいます。

ニョッキはジャガイモと小麦粉で作るパスタです。
ニョッキ

美味しいニョッキは溶けるように柔らかい口当たりになります。私は自分でニョッキを作ったことが何度かあるのでわかるのですが、このような口当たりのニョッキを作るのは難しい。口あたりの良さを優先すると形が崩れてしまうからです。

逆に形を整えようとすると、今度は硬くなりすぎて、「すいとん」のようになってしまいます。
すいとん

美味しいニョッキを作れる店は確かな技術を持っていると言えます。こうした店は、技術レベルが高いので、他の何を食べても美味しいと考えて、まず間違いはありません。

残念ながら、日本ではニョッキを注文する人はまだ少数派です。食べたことが無い方も多いと思います。

たしかに、ニョッキを注文すると、“極上”に出会える確率は低くて、多くの場合は“すいとん”ですから、ハイリスクなオーダーなのです。本国イタリアでも“すいとん”のようなニョッキを出すレストランは数多くあります。しかし、美味しいニョッキに出会えたら、「すばらしいイタリア料理店を見つけた」 ということがわかりますから、試してみる価値はあります。

ラビオリについては詳細は省きますが、ニョッキ同様、美味しく作るのは簡単ではありません。美味しいラビオリは、、皮と、中の具と、ソースが三位一体となったハーモニーを奏でます。

こうしたことから、腕に自信のあるイタリア料理店は、“店の看板メニュー”、もしくは “今日のおすすめメニュー” にニョッキかラビオリを入れている確率が高いです。なぜなら、スパゲティでは他の店との差をお客さんに感じてもらいにくいので、その差を見せつける料理をお客さんに食べて欲しいと考えるのが普通だからです。

逆に、「当店の自慢はスパゲティです」 と言うイタリア料理店に対して、私は 「?」 と思ってしまいます (*自家製の生スパゲティの場合は除きます)。

スパゲティだけでは満足しない、舌の肥えた客が増えれば、日本のイタリアンはさらに進化するはずです。日本でも、美味しいニョッキとラビオリを食べさせてくれる店が増えるよう、祈っています。
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